2012年1月27日 10:15

『ビッグブックのスポンサーシップ』

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依存症から回復する12ステップ・ガイド

ジョー・マキュー/著
依存症からの回復研究会/訳・発行

「ステップ12:これらのステップを経た結果、私たちは霊的に目覚め、このメッセージをアルコホーリクに伝え、そして私たちのすべてのことにこの原理を実行しようと努力した」(「AAの12のステップ」より)

著者のジョー・マキューは、「最近のメンバーは、新しい人にうまくプログラムを伝えられなくなっているのではないか」という、AA共同体や他の12ステップグループのなかで広く関心がもたれている事実にまず注目している。そして彼は、ビッグブックと、そこに記述されている12ステップと、「このメッセージを届ける」という12番目のステップに焦点を当てている。読者がAA プログラムのルーツと本質に立ち戻るよう、そして、この奇跡のプログラムの完璧さ・高潔さにもう1度目を向けるよう、彼は私たちに力強く呼びかけている。

※スポンサーシップ:一対一で12ステップを新しい人に手渡していくやり方。

編集者より

 ジョーはこの本で私たちをビッグブック(『アルコホーリクス・アノニマス』)の原理に案内してくれる。アルコホリズム(アルコール依存症)やその他のアディクションは病気であること、この病気の克服はスピリチュアルな目覚めによるほかないこと、AAの12のステップを始めから終わりまでとおして実行することでこの目覚めが引き起こされ、ソブラエティ(飲まないで生きること)と平安がもたらされること――これらの事実が、この本によって明らかにされている。
  ソブラエティと平安を得るためには、ビッグブックに述べられている「このメッセージ」を他の人たちに運ばなければならない。そのために私たちは、ミーティングに参加して分かち合い、スポンサーシップを行う。この新しい本でも、ジョーは私たちをビッグブックの原理に立ち戻らせ、AAミーティングとスポンサーシップをどのように用いれば私たちの目標であるスピリチュアルな目覚めに到達できるかについて、経験と力と希望を分かち合っている。  (一部抜粋)

訳者あとがき

 この本は、2002年に出版されたジョー・マキュー著『CARRY THIS MESSAGE』の翻訳です。ジョーは、2007年の3月に45年のソブラエティを迎えたアルコホーリクであり、また、リトルロック市(アメリカ、アーカンソー州)にあるアルコール・薬物依存症回復施設「セレニティ・パーク」の所長を30年以上務めている人です。
 1973年、ジョーはあるイベントでチャーリー・Pと知り合い、それ以来、二人は『アルコホーリクス・アノニマス』(ビッグブック)と「12のステップ」の理解と実践について深い分かち合いをするようになりました。やがて、その活動が仲間に知られ、二人はAAの集まりで話すように頼まれました。そのときの話は大きな反響を呼び、口コミで、二人組みのスピーカーズ・ミーテイングが広がっていきました。「ジョー・アンド・チャーリーのビッグブック・スタディ」は多い時には年間30回以上も、アメリカ、カナダ、ヨーロッパの各地で開催され、そこで学んだアルコホーリクやほかの依存症者は延べ50万人にもなると言われています(ピッグブック・スタディは1977年に始まり、10年以上続いたが、ジョーの病気のために現在は行われていない)。今でも「ステップはどうやって踏みましたか?」とアメリカのメンバーに聞くと、多くの人が「ジョー・アンド・チャーリーだよ」と答えるほどです。
 しかし、AAは20世紀の終わりにメンバー数の減少を初めて経験するなど、いくつかの問題に直面するようになりました。ジョーがこの本を著したのは「気がついたときには手遅れになっていた」(本文9ページ)ことのないように、という思いからです。彼は、現在のAAが抱えている問題点を分析し、解決の方途は何よりも「原点――ビッグブックに戻ること」であると提起しています。
 ジョーは本書で、12のステップとビッグブックがどのようにして作られたかを振り返っています。そのなかで、12のステップは三つのルーツを持ち、それぞれのルーツが三つの部分を構成していること、それは「問題」(ステッブ1)と「解決策」(ステップ2)と「解決策を手に入れるための行動プログラム」(ステップ3から12)であると強調しています。これによって、12のステップは仕組み自体がとてもシンプルであり、「Keep It Simple(AAプログラムはシンプルなままにしておこう)」というAAの共同創始者ドクター・ボブの遺言の意味も、そしてAAのアマチュアリズムの重要性も明らかになります。12のステップは、共通する問題を持っている人がもう一人の人へ手渡していくシンプルでスピリチュアルな生き方の道具であり、原理なのです。
 ところで、ジョーは偏狭な原点回帰を主張しているのではありません。彼は、ビッグブックの15年後に出版されたビル・Wの『12のステップと12の伝統』を積極的に評価しており、そこに展開されている人間の本能という概念ビッグブックでは充分に言及されていなかったものを取り入れて、棚御しの考え方、方法を説き、本能を手の内に納めて生きていく方法を示しています。ジョーのステップが、アメリカ、カナダの、そして世界中の仲間たちから愛されている理由は、このあたりにもあるのではないでしょうか。
 この本でジョーは、12のステップの1から8までは1か月ないし1か月半の短期問で取り組むよう提案しています。読者のなかには、「アメリカ人の場合はそれが可能かもしれないが、日本人にそのまま適用できるだろうか」、「初期のAAではそうだったかもしれないが、現在はどうなのだろう」というような疑問を持たれる方がいらっしゃるかもしれません。私たちが2007年3月にジョーに会ったとき、このことに関して質問してみました。ジョーが、「このプログラムを数か月の期間かけて取り組むことも、もちろんありうることです」と語ってくれたことをここに紹介しておきます。
 ジョーと原著の出版社である「オーガスト・ハウス」は、本書の日本語翻訳版の出版を、通常のビジネスの社会では考えられない破格の条件で許可してくれました。私たちは、ビッグブックの一節「あなたが幸せな運命への道をきりひらきながら一歩ずつ歩みを進めるとき、必ず私たちの仲間と出会うことだろう」(240ページ)という言葉をかみしめています。私たちがジョー・マキューという仲間に出会えたことは、真にハイヤーパワーの配慮であったと信じています。
 最後になりましたが、本書はAAプログラムに関心を持つ関係者とアルコホーリク本人の10余名が共同で翻訳したものです。ビッグブックとこの本を導きの書としてスポンサーシップを組み、12のステップに取り組んだ成果などをぜひお聞かせください。
 2007年6月
 依存症からの回復研究会

日本の読者へ(著者、ジョー・マキュー氏のメッセージ)

 この本、『ビッグブックのスポンサーシップ』(CARRY THIS MESSAGE)が発行されてから7年がたった。この世に変化しないものはないが、この7年間を振り返ってみると、私の人生にもたくさんの変化があった。AAの原理を実行していけば、私たちのスピリチュアルな変化と成長はたゆみなく続くのである。
 この本の唯一の目的は、仲間たちに、とりわけスポンサーに、「このメッセージ」を運ぶ方法を伝えることである。私は12のステップを実行することでスピリチュアルに目覚め、それ以来、たくさんのアルコホーリク、薬物依存症者にかかわってきた。私が設立した治療センターでも、大きな成果をあげている。その経験を踏まえて著したこの本は、きっと、読者の大きな助けになると思う。この本が日本の多くの人たちの手に渡り、活用されるよう願っている。
 12のステップは決して目新しいものではない。もともとは、数千年にわたって実践されてきた生き方の原理である。しかし、ビル・Wはその原理を巧みに編み変え、誰にでも実践できるシンプルなプログラムにした。そして、このプログラム――12のステップによって、数百万の人々が苦しみから救    われ、彼らの回復が可能になった。
 私は、AAの基本テキストであるビッグブックは改訂する必要はないと考えている。このプランを凌ぐものは、今のところない。実際、私にも、そして私がかかわった数千人の人たちにも効果があったのだから、きっとみなさんにも同じ結果が生まれるはずである。このことこそ、私が日本の読者にぜひお伝えしたい朗報である。
 私はオーガスト・ハウス、そしてケリー財団が、この本の日本語への翻訳と出版を許可してくれたことに、心から感謝している。翻訳はたやすいことではないことは私も承知している。しかし、この日本語翻訳版は、私が原文にこめたメッセージを正確に伝えるものとなっていると確信している。
 最後に、このスピリチュアルな回復の旅路において、私に与えられた恵みが、日本の仲間、読者のみなさんにも同じように与えられるよう祈ります。

 2007年4月23日
 ジョー・マキュー

目次

 AAの12のステップ
 日本の読者へ
 編集者より/謝辞
 第1章 特別な「贈り物」を手渡す
 第2章 出来事の共時性(シンクロニシティ)
 第3章 仲間にメッセージを運ぶ
 第4章 問題を理解する
 第5章 解決策を受け入れる
 第6章 重大な決心をする
 第7章 棚卸しに取り組む
 第8章 自分を動かす仕組みを学ぶ
 第9章 成長と変化
 第10章 過去を正す
 第11章 成長を続ける
 訳者あとがき

Carry This Message
A Guide for Big Book Sponsorship.
 by Joe McQ (of the "Big Book Study Tapes").